とどまることをしらないで。



普段と違う雰囲気を纏う彼は、色気が段違いでもちろんわたしも釘付けになった内のひとり。



ぽーっと見惚れていると、律くんはわたしに気づいたのか、わたしだけにしか分からないようにやんわり表情を崩した……後、



執事が、ピタッと足を止めた。


そして、かつかつと音を響かせてわたしの方へ向かってくる。


心なしか、少し焦っている気がした。




「……める、それ、なに」


「っえ、と、メイドです……」



どうしよう間近で見たらもっとカッコいい。

もういっそわたしの執事になって、なんて言ったら、律くんはどんな顔をするんだろう。



……それよりも、律くんの顔が深刻。険しい。




もしかして、メイド服が似合わなすぎて……とかかな。



「ごめん律くん、わたしこんな可愛い衣装似合わないけど、今日一日だけは我慢してください……」


「……はあ」



どうしよう、ついにはため息まで。

やっぱり無理矢理にでもキッチンの方にしたら良かった…っ。



だけど、降ってきたのは予想外の言葉で。



「……似合ってる」


「……っへ」


「可愛い、よ」


「っ、」




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