とどまることをしらないで。



『……あ、ありがとござまふ……』



もちろん彼のーー冷たくて無表情だという話はいやというほど聞いていて、彼と話すときは緊張でかちこちだったわたし。



『ふは、“ありがとござまふ”って……噛んでるじゃん』



だけど、その話はうそだったんじゃないか……って思うくらい、彼の笑顔は輝いていて。


わたしはころっと、堕ちてしまったんだ。



ーーーたぶんその頃から、ずっと好き。



二年生になって、同じクラス、隣の席で舞い上がってダメ元で頑張って告白して、降ってきたのは思いがけない言葉だった。



『……え?今なんて、』


『……だから、いいよって言ってんの』


『……なにが、』


『ーーー俺と付き合って、ください』




そのときの菅野くんの表情は、視界が涙でぐちゃぐちゃになっていて分からなかったけれど、柔らかかった気がした。



だけど、付き合っていることは誰にもひみつ。



本音を言えば、もっと教室でもくっつきたい。もっと話したい。
“律くん”って……呼んでみたい。


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