とどまることをしらないで。
『お は よ う』
ぱくぱく、と口を動かした言葉は、届いたのか、届いてないのか。
ふっ、と少しだけ、きれいに柔らかく表情を崩して、わたしと同じようにぱくぱく。
「……っ」
いま、きゅーんって音した気がする。ぜったい。
うれしさと温かさを、ぎゅっと閉じこめるように菅野くんと同じように微笑む。
でもまたスンってなんともなかったような彼は、見ていていたのか、わかんないけど。
……しあわせ、だ。
噛み締めるように、ぎゅっと目を摘むって幸せを実感していたこの緩みきった顔は、見ないでほしいな。
ぜったい、めちゃくちゃ変な顔、してる気がするから。
告白したのは、わたし。
高校二年生の一学期もまもなく終わるというころ。つまり、三ヶ月ちょっと前。
一年間、わたしは菅野くんとおなじクラスで隣の席。
この学校では席替えが一年間ないから、すっと菅野くんの隣だった。
『……これ、落としたけど』
落とし物に気づかないわたしに、声をかけてくれた親切なひと。
最初は、たったそれだけの認識。