(仮)花嫁契約 ~ドS御曹司の愛され花嫁になるまでがお仕事です~
不安的中な思惑に


『明後日の午前十一時、神楽(かぐら)グループの本社ビルに来い。受付にアンタの名前を言えば案内するように話しておくが、何か聞かれても余計な事は喋るな』
「余計な事って、迷惑料とかその代わりの契約の話の事ですか? そんなこと聞かれても言える訳ないじゃないですか」

 神楽グループの御曹司が、こんな平凡なOLに迷惑料を請求してると話したところで誰が信じるというのか。下手すれば私の方が、彼の気を引こうとして変な演技をしてる痛い女扱いされかねない。
 それに、私は心のどこかで神楽 朝陽(あさひ)はそんなに酷い奴じゃないような気がし始めていて。(ながれ)の件で彼にお願いした以上の事をしてもらったからなんて、自分はやっぱり単純なのかもと思わないわけじゃないけれど。

『それならいい。とりあえず当日はキチンとした身なりで来い、色はそうだな……白が無難だろう』
「服の色まで指定するんですか、面倒臭い」

 ついつい出てしまった本音、だってそこまで細かく指示されるとは思っていなかったから。彼と交わすであろう、契約とやらの内容をまだ教えられてないから尚更だ。

『……俺に意見できる立場だったか、アンタは?』
「いいえ、そんなつもりは欠片もありません。白を着てればいいんですよね、分かりました」

 神楽 朝陽がドSモードにならないうちにさっさと会話を終わらせなければ。聞き分けよくすればそれはそれで面白くないらしい彼の舌打ちを聞こえないフリをして、そのままさっさと電話を切った。


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