(仮)花嫁契約 ~ドS御曹司の愛され花嫁になるまでがお仕事です~


雨宮(あまみや) 鈴凪(すずな)様ですね、すぐに担当の者が参りますので少々お待ちください」
「あ、はい。どうも……」

 神楽(かぐら) 朝陽(あさひ)に指示された通り受付の女性に声をかけると、すぐに対応してくれた。けれど担当の者って、自分はあれほど余計な事を喋るなと言っておいてどういう事なのか?
 とにかく私は彼の指示通りに神楽グループの本社ビルに来て受付に話したのだから、何も問題ない筈だと自分に言い聞かせる。担当がどんな人でも適当に躱せばいい、そう思ってたのに……

「時間は守れるようだな、これで遅れてきたら利子でもつけてやろうかと思っていたところだ」
「神楽、朝陽さん……どうしてここに? だって、さっき担当の人が来るって」

 まさかの最初からのラスボス登場に私も戸惑ってしまった。心の準備はそれなりにしてきたつもりだったが、まだまだ私は甘かったようで。担当の者という言葉に、すっかり気を抜いてしまっていたのが間違いだった。

「アンタの担当は俺に決まってるだろ、他に誰がいるって言うんだ」

 そう言いながらも神楽 朝陽の眼鏡の奥の瞳は楽しそうに細められている。ドSな彼の事だ、ワザと担当の者という言葉を使って安心させておいたに違いない。その方が私のショックが大きいのを分かっててだ、本当に腹が立つ!

「……そうですね。わざわざ受付嬢にそんな遠回しな言い方をさせる、その性格の悪さは拍手ものだとおもいます」
「へえ、なかなか言うじゃないか。それでこそ躾がいがあるってもんだ」

 うん、もう何も聞こえなかったことにした方が良い。そう思った私は神楽 朝陽の声だけをシャットアウトする方法を本気で考えていた。


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