眠れる森の聖女
「で?何か相談があるんだろ?」

あ、そうだった。

「聖女様は、僕が転生者だと知った上で、聞きたいことがあると言っていました。何を聞きたいのか詳しいことはわからないし、意図もわからない。それに応じることで、僕が転生者で魔法が使えると公に知られたら、店に、、父さん達に迷惑をかけてしまうかもしれない、、」

「お前は、どうしたいんだ?」

「僕は、、父さん達に迷惑をかけたくない」

「そうじゃなくて、お前がどうしたいのかを聞いているんだ。父さん達のことは関係ない」

「僕は、、」

「聖女様は、どんな方だったの?」

横から母さんが聞いてきた。

「聖女様は転生者だと周りに知られたくない僕を気遣ってくれて、優しくて、賢そうで、、でも凄い魔力を持っていて、教皇様もだけど、何もしなくてもオーラを感じたのは初めての体験で、本当に驚いた」

途中から興奮して喋り過ぎてしまったことに気づいて顔を上げると、またみんなが笑いながら俺を見ていた。

「馬鹿ね。聖女様と魔法について語り明かしたいって、顔に書いてあるわよ」

母さんはそう言って、俺の頬を優しくつねってきた。

「店のことは気にするな。いつかこうなることもありうると検討した上で、お前を養子にしてるんだ」

父さんが俺の頭を掴んで、グリグリと髪をかき混ぜる。

「そうよ。私達のかわいい息子を悪く言う人がいたら、むしろ入店お断りよ!ね、父さん?」

「ああ、その通りだ。そんなやつに食わせる餃子と炒飯はねえ!」

なんか、、聞いたことがあるフレーズだ。

いや、それよりも、俺はこんなにも家族に愛されていたんだな。

そういえば前世の両親も、俺が事故にあって意識を取り戻した時、泣きながら生きていたことを喜んでくれて、、

あの時は自分の不運を嘆くばかりで気づかなかったが、父と母は、いつも俺を応援して、励まして、心配して、でも絶対に責めたりせず、優しく見守ってくれていた。

彼らも、間違いなく、俺を愛してくれていたのだ。

最後まで親を安心させてやることができなかった俺は、年齢だけは一丁前に重ねていたが、まだ大人にはなれていなかったのだと、今になって思う。

この世界が同じ時間軸にあるのかはわからないが、あれから12年、両親は元気にしているだろうか。

多分、彼らの元にはもう戻れない。

だからせめて、今の家族を大切にしよう。彼らを安心させられる生き方をしよう。

それを踏まえた上で聖女様の話を聞いてみると決め、それを両親に伝えると、彼らも納得して賛成してくれた。

今も昔もいい家族に恵まれて、俺は何気に運がいいのかもしれないな。
< 132 / 189 >

この作品をシェア

pagetop