手のひらに小さなハートを

クマのマスコット

「俺も欲しいな」
「えっ!?」

放課後、一人教室に残って友達に頼まれたクマのマスコットを縫っていた雫は、背後から突然話しかけられ驚いた。

聞き覚えのある声に振り返ると航介が立っている。
彼に話しかけられること自体珍しくて、心底驚いて変な顔で見上げてしまった。

「あ……え?これ欲しいの?」
「うん」

机の横に立って見下ろしている背の高い航介。
座って見上げている私は首が疲れそうだと気にしながら疑問に思った。

「陣内くん、クマ好きなの?」
「…………うん」

(長い()だな)

でも確かに彼は私の手元をじっと見ている。
男の子なのにこんな可愛らしいクマが好きなんだ、と意外な趣味に驚いた。

「今は友達の作ってるから、余力が残ってたらでいい?」
「うん、わかった」

航介は返事をしたあとそのまま帰るだろうと思っていたのに、雫のひとつ前の席に座ってまたじっと手元を見ていた。
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