内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
小さな流れ星に捧げる祈り

 龍一さんとの同居を開始して間もなく二週間。同居生活は凪のように穏やかだ。

 というか、龍一さんがとても忙しい人であるため、あまり一緒に住んでいる感じがしない。

 出勤も帰宅もバラバラなので、朝と夜、少し言葉を交わす程度だ。

 それでも決して家の中の雰囲気が冷たいわけではなく、龍一さんは話すたびに笑顔を見せてくれるし、朝起きた時の私の顔色を見て、体調を気にかけてくれたりする。

 龍一さんは男性なので姉との暮らしよりは緊張する面もあるけれど、不思議と居心地は悪くなかった。

 会社には先週のうちに婚約を報告し、以前から知っていた石狩課長を含めた開発部の同僚たちは、驚きを見せつつもごく普通に祝福してくれた。今のところ他部署の女性社員たちから白い目で見られている自覚もない。

 ただ、小峰さんとはまだ顔を合わせていないので、彼女がどう思ったのかは不明だ。

 そうして平穏な日々を過ごす中で迎えた、十月下旬の金曜日。私は昼休みにひとりで社員食堂にいた。

 Sparcilの社員食堂は、重役フロアの一階下。眺めのよい窓際で早々と食事を終えた後、新しく買ったプライベート用のメモ帳を繰り返し読み込んでいる。

< 103 / 247 >

この作品をシェア

pagetop