【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜

1話:光よりもまぶしい闇




 大陸ユストピアは、ラーゲルレーグ帝国、西華国、クア教国の三勢力によって支配されている。

 闇夜の一族ヴァレンティーノ家。

 表向きはラーゲルレーグ帝国の伯爵位を賜る家門だが、その裏は『覇王』と呼ばれ、西華国とクア教国の無法地帯に築かれた闇使い組織と深く繋がっている。

 ヴァレンティーノ家は、ある理由から国内のみならずその他二カ国からも目を置かれており、ゆえに誰もが下手に手出しできない存在だった。


「ルロウ様、あの夜は助けてくださって、ありがとうございます。これから、よろしくお願いします」

 その青年は、造形美ではないかと錯覚するほどにすべてが整っていた。

「…………」

 寝台にはべらせた裸体の女性たちのあいだから上半身を起こし、ゆっくりと首をもたげる。
 興味がなさそうな瞳をこちらに向けて、なお興味がない口ぶりで言った。

「……それは、どこの餓鬼だ?」
(今日からこの方が、わたしの……本当に、務まるの?)

 これは、ヴァレンティーノの次期覇王との婚約が決まった――見世物小屋の聖女の話。


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