【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜




「――つまらん」


 期待はずれと、ルロウの鼻白む声が告げていた。


「聖女とは、人の善も罪もすべて受け入れ、慈悲の笑みを浮かべる清い存在――と、聞いていた。だから、興味があった。豚小屋のような場所から救い出され、親切に触れ、周りが優しい人間ばかりだと錯覚した聖女が、どんな顔をするのか」

「興、味……?」

「随分、おれを慕っているようだったから、気になってしまってな。婚約者への接し方とはこういうものかと試行したが、とてもそれらしかったろう?」


 やけに饒舌に、まるで最後の手向けとでも言うように滔々と語る。

 婚約者を「要らん」と言ったルロウが、気まぐれのように構ったり、優しさを見せてきたのは、一緒に過ごして仲が深まったからだとばかり考えていた。

 だけど、違った。
 ルロウは常に見定めていたのだ。

 聖女であるシャノンが、ほぼ飼い殺しのように手厚い待遇を受けて、錯覚して――ヴァレンティーノの本質に触れたとき、どんな顔をするのか。

 それだけのために、ルロウはシャノンと接していた。
 それが果たされたいま、ルロウの興味は失われてしまった。

 
 ――イカれてやがる。

 片腕を切られ、憎悪の燃やす声が、シャノンの脳裏で反響した。


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