初恋は苦い思い出。でも出会うべく人と出会いました
「……身長が伸びましたね? 声も変わって、顔もシュッとしましたが、あの時、そうだ! ロワール領地内だったもの。私ジルベルト様に会ってましたね!」

「……覚えていたのか」
「はい。同じくらいの歳かなって! ロワール領の人は優しいと思ってあの町が更に好きになったんですよ。領主のお話や息子さんのお話を聞いていたのに、お顔を存じ上げなかったから。ふふっ。ジルベルト様だったんだぁ」

「怒ってない? くだらない理由で変装してた事」
「怒る? 何かそうしないといけない理由があったのではないですか? 別に騙されたわけじゃないですし、少し引っかかっていたのでスッキリしましたよ」

「今日をタイミングにしたから……オフィーリアをダシにしたとか思わないの?」
「うーん。ジルベルト様は優しすぎますよ? 心配になりました」

「僕そんなに優しい人間じゃないからね」
「いいえ、優しいですよ。ジルベルト様は悪くないのに謝ってくれましたし、なんだろ……あれです、壁が取れた感じですね」

 やっぱりジルベルト様と会ったことがあったのね! しかもあの時の男の子だったとは。なんだか嬉しい。

「あっ、私の事覚えていてくれましたか?」

 記憶にはあったみたいだけど。

「もちろんだよ。ロワール領地内にこんなに可愛い子はいないから学園であった時にすぐに分かったよ」

 ……ジルベルト様ってお世辞が上手。なんだか急に恥ずかしくなってきた……

「オフィーリア、今日のドレスすごく似合っている。か、その、か、可愛い。キレイだ」

 向かい合ってちゃんと褒めてくれた……

「……ありがとうございます。ジルベルト様のタキシード姿も……カッコいい、です」

 校門で二人もじもじと話しているのもおかしいので、フローリア様とルシアン様と合流する事にした。腕を出されたのでそっと手を添えた……パートナーだもんね。


 パーティー会場に入るとすぐにルシアン様が見つけてくれた。

「? なんだ二人とも赤い顔をして……付き合いたてのカップルか?」

「なっ、ルシアン、」
「ル、ルシアン様、あの」

 周りに人がたくさんいるんだけど! 誤解されたらどうするのよ! と非難の目を向けた。

「周りに聞かせておけば良いじゃないか。それよりすぐにジルベルトが分かったのか?」
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