白い嘘と黒い真実

第2話.運命の人?


__引っ越し二日目。


今日からまた一週間が始まり、私は普段通りの時間で身支度を済ませ、家のゴミを回収してから玄関へと向かう。

月曜日は可燃ごみの日なので、私はパンパンに膨れた重量感たっぷりのゴミ袋を三つ抱えながら、肩に鞄をかけて靴を履く。

引越し作業後なので、いつもの倍以上の量になってしまうのは致し方ないけど、あまりの重さに昨日捨てなかった自分を恨めしく思いながら家の扉を開ける。
それから鍵を閉めた後、このゴミ袋をこれから一階まで運ばなければいけないのかと、げんなりしながら手に持とうとした時だった。

301号室の方から鍵を開ける音が聞こえ、私は思わずピンと背筋を伸ばす。

そして、程なくしてスーツ姿の澤村さんが同じようにゴミ袋を一つ手に持って部屋の中から出てきた。

「……あ、お、おはようございます」

とりあえず、顔合わせた以上は挨拶をしなければと、私は若干引き攣った笑顔で軽く会釈する。

「おはようございます」

相変わらず無表情のまま澤村さんは視線をこちらに向けると、同じように軽く頭を下げてから直ぐに顔を背けてしまった。


…………やっぱり気まずい。

しかも、ゴミ袋があるということは向かう先は一緒の上に、話しかけるなオーラを出しているので余計に気まずい。

とりあえず、気にせず先に下に降りようと、私は三つの重たいゴミ袋を何とか持って階段の方へと向かおうとした時だ。

「一つ持ちますよ」

不意に澤村さんの手が伸びてきて私のゴミ袋を取り上げると、何も言わずに足早と私の前を歩いて行く。

「え?あ、あの?」

思いもよらない手助けに一瞬面を食らってしまったけど、直ぐに我に返った私は慌てて彼の後ろを追いかけた。

「あ、ありがとうございます。お手間を取らせてしまってすみません」

「いえ、お気になさらず」

それからご厚意に甘えて私はそのまま澤村さんに運んでもらいながら、背を向けた彼にお礼を言うと、やはりこちらを振り向くこと無く、冷めた声で一言そう返ってきただけだった。

それでも、私を受け付けないと言ってきた割にはこうしてスマートに人助けをしてくれるのは職業柄なのかなと。内心感心しながら密かに胸をときめかせる。


「ここまでありがとうございました。お陰で助かりました」

こうして無事に収集所へと捨てる事が出来、私は満面の笑みで彼に深く一礼した。

「あの、澤村さんって昨日もお仕事だったのに、 今日も出勤なんですか?警察ってそんなに大変なんですね」

そして、せっかくの良い機会なのでここは親交を深めてみようと、私は勇気を振り絞って彼が作る壁を無視して雑談を試みる。

「捜査に土日休みもないですから。では、俺はこれで」

けど、その思惑も虚しく、最もな返答をされた後に会話はそこで呆気なく終了してしまい、澤村さんはさっさと出勤して行ってしまったのだった。
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