白い嘘と黒い真実
「ちなみに、今日は誰と飲むの?彼女からあまり詳細聞いてなくて」

なんと。
まさかの信じられない高坂部長の質問に、それでよく了解してくれたものだと内心驚きながら、とりあえず高坂部長にも事の経緯を知ってもらおうと詳しく事情を話すことにした。

「実は、引越し先の隣人が警察官で、その人には色々とお世話になっているんですけど、その人の同僚の方が私に興味を持ったそうで。なので、紗耶にはその付き添いで来てもらうことになったんですよ」

あまり嬉しくない話だと改めて思いながらも、変な誤解がないよう全てを打ち明けると、何故か始めのうちはにこやかに聞いていた高坂部長の表情が気付けば真顔へと変わっていて、私は何か不味いことでも言ってしまったのかと焦り出す。

「あ、あの。大丈夫ですよ?あくまで向こうはただ私と話したいだけで、合コンとかじゃないって断言してましたから」

もしかして、今になって飲み会に対する不快感を持ち始めたのかと思い、私は高坂部長の顔色を伺いながら必死に弁解した。

「分かってる。そうじゃないから」

すると、そんな懸念を振り払うように高坂部長は直ぐにいつもの優しい笑顔に戻ってくれたのは良かったけど、そうじゃないというのなら一体どういう事なのかよく分からず、私は小さく首を傾げる。

「高坂部長は紗耶がそういう飲み会に行くことに不安は感じないんですか?」

不穏な顔付きになったのが彼女のことではないと言うのなら、高坂部長は本当に紗耶のことをどう思っているのか疑問に感じ始め、この際だから単刀直入に聞いてみることにした。

「うん、ないよ。だって愛されてるってよく分かるから。俺は彼女のことを信じてる」

一体どんな反応が返ってくるのかと思いきや。一点の曇りもなく、まるで後光が差す程の眩い笑顔でそう断言してきた高坂部長の言葉が心に深く突き刺さり、思わず拍手したくなる衝動を私は何とか堪える。

「それは素晴らしいです!そうですよね!良かった。きっと紗耶もそれを聞いたら安心しますよ!」

そして、つい余計なことを口にしてしまったような気がしたけど、彼の真っ直ぐな答えが完全に私のツボを刺激してきたので、細かいことは考えずただひたすらに一人その場で感動していた。
< 80 / 223 >

この作品をシェア

pagetop