劣化王子(れっかおうじ)

それから数日後。

「他にいい案はありませんか?」

教卓に立つのはクラス委員の男女2名。

午後の授業は来月の文化祭について話し合う時間になった。

「静かにしてくださーい!」

担任の先生は出張でいない。

ここぞとばかりにボールを持ち出す男子たちに、クラス委員はしかめっ面。

話が進まなくて退屈に思ったわたしは、視線をふたつ前の席に移す。

しずちゃんはひじをついて窓の向こうを眺めていた。

「……はぁ」
あれ以来、わたしたちの会話に沢部くんの名前は出ていない。

顔を見てちゃんと聞くつもりだったけど、しずちゃんは何もなかったかのように接してくるから、聞きづらくて……。

わたしには言いたくないのかな。

なんだか、しずちゃんとの距離が一気に開いたような……。


◇ ◇ ◇



「なんかつまんなくね?」

出し物を決める中、やっと意見がまとまってきたなというときに、ひとりの男子がため息まじりにつぶやいた。

「たしかに……」

「クジ引きとかマンガ喫茶なんて他のクラスもやってそうじゃん」

「演劇とかやりたくねーし。もっと変わったやつにしようぜー」

遊んでいて話し合いにも参加しなかったくせに、女子たちだけで決めたものに文句をつけてくる。

そんな彼らにイライラした。

眉間にしわを寄せ、不満を言う男子たちを睨んでいたら、

「組み合わせてみるのはどうかな?」

突然、ななめ後ろのユノが立ち上がった。
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