稼げばいいってわけじゃない

第13話

「お父さん!!遅い!!」



 瑠美は玄関の前で、
 父の車がガレージとまったことを確認すると、ジャンプをして帰宅を喜んだ。



「瑠美、1人でいたの?!」


 塁が声をかける。



「うん、そうだよ。
 お母さんずっと帰ってこない。
 お腹すいたよ~。」



「はいはい。
 今、コンビニで買ってきた。
 どのおにぎりにする?」



 晃は、きっと家には
 絵里香はいないだろうと予測して、
 夕ご飯用のおにぎりを用意した。

 テーブルに置いた
 ビニール袋からおにぎりが
 こぼれ落ちる。


「わぁい。私、鮭がいい。」


「僕は筋子~。」


「お父さんは何にする?
 肉巻きおにぎりかな。」


「あぁ、それでいいよ。」


 帰ってきて、
 すぐ晃はリビングを見渡す。

 いつも通りの様子で、変わりはない。

 置き手紙もない。


 でも、洗面所に行くと、
 洗濯カゴに大量の洗っていない
 洗濯物があり、

 台所には今朝の汚れた皿が大量に
 残されていた。


 洋服を片付ける部屋では乾いた服が
 乱雑に置いてあった。



 お風呂場は栓がぬかれて、
 空っぽの湯船。

 トイレの
 トイレットペーパーは、
 切らしている。


 ストックを置く倉庫にもない。

 念の為、確認した炊飯器には
 空っぽで
 中にはヘラだけが入っていた。

 米びつには
 あと1合あるかないかの量が
 入っている。


 冷蔵庫を見ると卵と豚肉があり
 野菜コーナーには
 キャベツしかなかった。

 カレールーはあるのに
 主要野菜の
 にんじん、たまねぎ、じゃがいもが
 ない。


(これって俺への当てつけなのか?)


 郵便受けには1週間前に届いたで
 あろうものが溜まっていた。

 末日までセールのハガキがある。

 今は月の上旬でとっくにセールは
 終わっている。


 自分は何を見て、
 何をしていたんだろう。


 独身の一人暮らしなら
 家のことを多少
 手抜きをしても
 許される部分があるが

 家族となると話は別

 使う食器、食べる量
 着る服、履く靴
 部屋の広さや
 迫り来るミッション
 学校や幼稚園のお便りの山

 参観日や面談の日時、
 PTA行事の把握

 親というのはお金の稼げない
 ミッションがたくさんある。

 そして、それをサボると
 子どもの心を傷つける内容も
 もちろんある。


 給食弁当に使うマイ箸を
 持たせるのを
 忘れたり、
 歯ブラシを入れなかったり
 水着や上靴の管理
 着替えの準備

 服の名前書き

 地味で重要なミッションが
 多すぎるのだ

 病気になれば
 最寄りの病院に連れていくし
 検診に引っ掛かれば
 それを病院に連れてって結果を
 学校に見せないといけない


 保護者会役員も辺りを
 見渡して学年の最初に 
 やればあとは楽ちんとかいう人もいる

 PTA交通整理の旗振りなんて
 寝過ごしてしまいそうなくらい
 早い時間から
 配置される

どれもこれも 手伝ってと
 声をかけても、晃は仕事だからと
 断ってきた

 半ば諦めた絵里香は、自分でやると
 晃はいないものと
 決めてこなしてきた

 感謝なんて誰からもされない

 でもやらないといけない

 給料なんて発生しないのだ


 子どものためにという
 一心だけ。

 ご飯作るのも
 笑顔になるなら
 やり甲斐がある

 あれ嫌いこれ嫌い
 他には無いの
 と
 買ったきたもの全部
 否定されると
 何を糧にご飯を作れば良いか
 わからなくなる


ましてや、
旦那は夜遅くに
感想さえも言わずに
夕飯を完食する。

いや、いいよ。
全部食べてくれるのは。

せめて、ごちそうさまの一言
いうべきでしょ。

当たり前のように食べて
当たり前のようにやり過ごす。

妻はロボットでは無い。

れっきとした人間だ。


求めようとすれば求めるし
嫌がることもある。


毎日美味しいご飯なんて
続けてできるわけがない。


10回に3回はおいしく
無い日があるだろう。


その日の体の疲れや精神状態で
美味しい時もあればまずい時もある。


ロボットじゃないんだから、
それでも料理というフィールドに
真剣に向き合ったことを
認めてほしい

すぐに外に食べに行こうと
言っても

今日は疲れているから
家で食べたい

でも、食材は、誰が調理する?


お皿に茹でていないうどんの乾麺でも
広げて出せばいいですか。


あなたも疲れているのならば
私も同じにして
疲れている


そしたら、
食べないで
寝てしまおうと屁理屈を言う。


冷蔵庫に、食材はある。

炊飯器にご飯もある。


食べないの意味がわからない。


子どもたちはピーピー



「お腹、空いたぁ。」


 お腹をおさえて、
 瑠美と塁は晃に、せがむ。

 コンビニおにぎりでは
 足りないらしい。

 絵里香はいない。

 こう言う時
 絵里香はすぐに冷蔵庫から
 適当に2人が好きそうな
 オムライスや、親子丼を
 作ってしまう。

 晃はそれを真似てしようかと
 思ったら
 鶏肉はない。

 玉ねぎも、ベジタブルミックスも。

 料理というのは
 買い物をしないとできないんだと
 いうことを考える。


 妥協して豚肉でと思ったが
 子どもたちが許さない。

 
(確かに、これを毎日されたら
 たまったもんじゃないな。

 ミルクだけなら哺乳瓶に入れて
 お湯入れて冷ますだけだったのに…
 これ嫌だとか言われたら…。

 仕事で疲れて帰ってきてるのに
 この作業…
 俺は何見てたんだろう。)


 冷蔵庫のドアをパタンと閉めた。


「よし、買い物行こう。
 食べたいもの買ってこよう。」

 晃は子どもたちに提案する。

「えー、やだー。
 疲れてるもん。
 行きたくない。」


「私は何でも良いよ。」


「そんなこと言われても…。」


晃は途方に暮れて台所で膝をついた。

背中に塁が横から瑠美が声をかけてくる。

逃げ出したい。

疲れていた。

両耳を塞いだ。















       
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