旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 遊園地の入り口に立つ四人は、入場前にまずは挨拶をと、互いに自己紹介をしていた。

「えーと、結婚式でお会いしてるので二度目まして? 美咲の友達の堀越千佳です。で、こっちは彼氏の田口智博(たぐちともひろ)です」
「どうも。よろしくお願いします!」

 千佳も田口も見た目からして陽気な雰囲気が伝わってくる。美咲は二人が一緒にいる姿を何度か見ているが、いつ見てもお似合いの二人だ。千佳たちが明るい空気を出してくれるから、抱いていた不安も少し薄れたような気がする。

 自分も二人の流れに乗ろうと、美咲が聡一を紹介しようとしたら、それよりも早く聡一が自ら自己紹介を始めた。

「美咲の夫の聡一です。いつも妻がお世話になっています。今日はよろしくお願いしますね」

(美咲!? 不意打ちの呼び捨ては勘弁して……)

 美咲に呼びかけているわけではないとわかってはいるが、それでも呼び捨てにされると反応せずにはいられない。嬉しいやら恥ずかしいやらで美咲は手で顔を軽く覆って照れていた。そんな美咲を千佳がニヤニヤと見つめてくる。美咲が照れていることをわかっているのだろう。そんな目で見るなと視線で訴え返せば、さらに意地悪な笑みを送ってくるものだから、美咲は目だけで怒ってみせた。
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