旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 二人が訪れたのは県内一の人気を誇る動物園だ。開園間もない時間だが、すでに多くの客で賑わっている。美咲は久しぶりに訪れたその空間に独りでに気分が高揚していた。周りの客の楽しそうな雰囲気につられているのかもしれない。周囲には楽しそうにはしゃいでいる子供の姿がある。予想通りの光景だ。きっとこういう子連れの客が多いのだろうと思っていたのだ。だが、予想に反して大人だけで来園している客も多くいる。大人二人だけの自分たちは浮くんじゃないか、なんて出発前には思っていたが、そんな心配は無用だったようだ。


「美咲さん、見たい動物はいますか?」

 美咲は聡一の問いにパンフレットとにらめっこをした。基本的には小動物なら何でも好きなのだが、一種だけどうしても見たい動物がいた。

「うーん、カピバラが見たいです! あとは、この辺のミーアキャットとかリスザルとかのかわいらしい子たちですかね」
「カピバラがお好きなんですか?」
「はい! カピバラってとても穏やかに見えるじゃないですか。なんだか見ていると心が和むんですよね」
「なるほど。確かに他の動物にちょっかいをかけられても、まったく動じずにじっとしていたりしますよね」

 聡一のその言葉を聞いて、猫カフェで聡一が猫に囲まれている姿を思いだした。聡一にもカピバラにも自然と寄っていきたくなるような魅力があるのかもしれない。
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