溺愛社長とお菓子のような甘い恋を

翌日。
午後の15時から行われるイベントには約100人程度の関係者が詰めかけた。
有名シェフとのコラボということもあり、話題性は抜群だ。
このあと、社長が登壇して挨拶をすることになっており、舞台袖でそっと声をかける。

「社長、昨日お渡しした原稿は覚えてらっしゃいますか?」
「あぁ、大丈夫だ。記憶力はいいからな」
「わかりました」

一応、念のため原稿を渡しておこうかと用意していたが必要なかったようだ。

『それでは神野社長、ご挨拶をお願いいたします』

ステージ上から司会に呼ばれ、社長は背筋を正すと舞台上へ出て行った。
その姿はなんだか芸能人の舞台挨拶のようだなと思う。今回は芸能人にPRしてもらう商品ではないからか、余計に社長が映える。
本当、かっこいいなぁ……。
つい見惚れていたが、頭を振って再度予定表を確認した。
このあとは会場内で試食会が開かれる。
終了予定は17時。
隣の会場でパーティーが開かれるのが18時だが、時間が押したりしなければ生島さんにばったり会うこともない。

「社長、何か飲みますか?」
「いや、試食会の時にうちの飲料が出るだろう。それを飲むからいい」
「わかりました」

今回の商品だけでなく、うちの商品をいくつかピックアップしての試食会だ。もちろん、飲料も揃えていた。
社長について挨拶回りをしていると、後ろからそっと社員が声をかけてきた。

「大園さん、すみません。受付の招待名簿と番号が書かれた名札が合わなくて……。社長のお知り合いで記入漏れがないか確認してもらっていいですか?」
「わかりました」

社長に断りを入れて、会場の外にある受付へ行く。

「どれですか?」
「ここなんですけど……」
「……あぁ、ここの会社。付き添いの人数、違っていると思います。実際来ているのは一人少ないですよ。急な休みとかかもしれないですね」
「そうなんですね。あぁ、良かった。助かりました」

参加人数の変更を相手の会社側が受付に伝えていなかったのだろう。

「あとは大丈夫そうですか?」
「はい、問題ないです。ありがとうございます」

役に立ててよかった、とホッとして会場内に入る。

でも、うかつだった。
この時、あの人に姿を見られていたなんて思ってもいなかったんだ。

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