溺愛社長とお菓子のような甘い恋を

8.お菓子が甘いのか、それとも……


この土日は海斗さんに離してもらえず、ずっと一緒に過ごしていた。
仕事中はあんなに厳しいのに、恋人になるとこんなにも甘やかされて愛されて優しくされるのかと思い知る。
恋人にこんなに大切にされるなんてあまり経験ない。

「別に帰らなくてもいいだろう」

日曜の夜、車の中で少しつまらなそうな声を出す海斗さんに苦笑した。

「仕事の支度もありますから…。また明日合えますよ」
「仕事とプライベートは違うだろう」

名残惜しそうに深く口付けをする。
晴れて恋人関係にもなり、仕事も一緒ということで少し気恥ずかしさがあったがそこは海斗さん。
仕事になると一気に神野社長の表情で今まで通りだった。
宣言通り、ちゃんと区分けはするみたい。

「大園、今度の新開発会議の日程どうなった?」
「予定通り第二週で調整がついています」

海斗さんはファイルを見ながら頷く。
仕事が始まると「大園」呼びになるんだよね。
そりゃそうだよね。当り前だ。
仕事中にイチャイチャなんてできないししたくない。
そこはわきまえていきたいと思う。
でも……、ほんの少し寂しいと思うのは私の我儘だ。

「今日は先日の接待でいただいたクッキーをどうぞ」

休憩時にお皿に乗せてクッキーを渡すと、パソコン画面をみていた海斗さんが顔を上げてほほ笑んだ。

「ありがとう。少し休むか」

腕を伸ばして体をほぐす。

「花澄も食べよう」
「え……」

急な花澄呼びにドキッとする。
海斗さんを振り返ると、ニッと口角を上げた。

「おいで、花澄」

表情が一気にリラックスしていて、仕事モードが消えている。

「……海斗さん、楽しんでいるでしょう?」
「なにが?」

とぼけながらクッキーを頬張って頬を緩めている。
私は顔が赤いままだ。
からかって楽しんでいる海斗さんに膨れつつも、一緒におやつを食べて休憩をとった。
海斗さんは仕事の時でも息抜きや休憩時のタイミングになると、私を花澄呼びして恋人の表情を見せるようになっていた。
海斗さんの中では、仕事でも休憩中はプライベートに区分するらしい。

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