溺愛社長とお菓子のような甘い恋を

普段は前髪をあげているのに、お風呂上りは下がっていて少し幼く見える。
Tシャツとズボンというラフな格好が、いつもとギャップを感じてどこに目線を向けていいかわからなかった。
シンクに立っている私の背中越しに、冷蔵庫を開けて水を飲んでいた社長からいい香りがしてさらにドキドキする。

「俺、こっちで寝るからベッド使っていいよ」

寝室は別の部屋にあるようなので、こっちと言われるとソファーしかない。
さすがに社長をソファーで寝かすのは気が引けた。

「いえ、私ここで寝るつもりでしたから」
「駄目だ。女性をソファーで寝かせたくはない」
「でも……」
「……じゃぁ、一緒に寝るか?」
「え?」

目を丸くして振り返ると、社長は私をじっと見つめていた。
熱を含んだまっすぐな視線に、心臓が大きく鳴る。

「ただ、一緒のベッドで寝たらここまで我慢していた俺の理性は吹っ飛ぶよ。それでもいい?」
「理性……?」
「あぁ。好きな人と同じベッドに入るんだから飛ぶに決まっているだろう」

好きな人……?
今、好きな人って言った?

「……どうする? 嫌なら……」

ぶんぶんと首を振って、言いかけた社長の言葉を遮る。
きっと今、私は真っ赤な顔をしている。でも……。

「嫌じゃないです。私の理性も……、きっと飛んじゃいます」
「花澄……」

社長――、海斗さんは私の名前を呟くとそっと抱き締めて、ゆっくりと唇を重ねてきた。
この前のような、触れるだけのキスではない。
もっと深く、味わって堪能するようにお互いの唇を感じるキスだ。

「ん……、あ……」

舌を絡ませて、口の中も蹂躙する。
ピッタリと抱き合うと、海斗さんの熱と高ぶりを感じて体の奥がゾクゾクする。
とろけてしまいそうだった。
甘いキスに足の力が抜けそうで、海斗さんの服をギュッと掴む。
すると、唇を離した海斗さんが私を抱き上げた。

「きゃぁ」

驚いて、首にしがみつく。
海斗さんは廊下を進み、部屋に入っていた。
暗くてよく見えないが、大きなベッドがある。
そこにゆっくりと降ろされた。

「本当にいいのか?」
「はい。私も海斗さんが好きです」

改めて言葉にするととても恥ずかしいが、しっかりと告げると海斗さんは嬉しそうに笑った。
そして服を脱がせながらゆっくりと私の体にキスを落としていく。
自然と甘い声が漏れる。

「花澄……」

吐息の合間に名前を呼ばれ、体の奥からゾクッと喜びを感じる。
触れられたところが熱くて気持ちよくて身をよじる。
鍛えられた逞しいその体にしがみつくと、海斗さんはより深く体を重ねてくれた。
海斗さんの余裕がなさそうな息遣いに、切なくて愛おしくてたまらない気持ちになる。
たっぷりと何度も愛されて、私は怖い思いをしたことなんてすっかり忘れていた。
それくらい、心も体も海斗さんの愛で満たされたのだ。

翌朝、カーテンから漏れる光で目が覚めた。
そっと横を見ると、海斗さんが気持ちよさそうに眠っている。
寝顔も綺麗だなんて羨ましい。
私は起こさないようにベッドから降りようとすると、グイっと腕を掴まれた。

「きゃぁ」

優しく引っ張られたが、勢いでベッドにコロンと転がる。
驚くと、海斗さんがにっこり微笑んでいた。
寝起きも色気が溢れていて直視できない。

「おはよう。どこ行くの」
「おはようございます。えっと……、お風呂場へ……」

そう言うと、ニッと口角を上げる。
あ、なにか悪いことを考えているな。
そう思った瞬間、海斗さんは私を抱き上げるとベッドから降りた。

「きゃぁぁ」
「一緒に入ろう」
「えぇっ」

嫌な予感は当たった。
お風呂場でまた、海斗さんに甘く食べられてしまったのだ。




< 20 / 35 >

この作品をシェア

pagetop