お飾り側妃になりましたが、ヒマなので王宮内でこっそり働きます! ~なのに、いつのまにか冷徹国王の溺愛に捕まりました~
もう夏も終わるはずなのに強烈な日差しが照りつける翌日の午前。
黒い影を落とす後宮の木陰で賑やかに鳴いているのは、ミンミンゼミだろうか。声だけを聞いていると、今が夏の盛りのような錯覚に陥ってしまう。
いや、夏の盛りのようなのは周りの蝉の声だけではない。今、手の下にある引き抜かなければならない草たちの茂り具合は、どう見てもこの強い日差しの賜物だ。
「なんで、私たちが草引きなんて!」
目の前で手の平ほどのサイズにまで伸びた草を引き抜きながら、同じ棟に住むメイジーはぷうっと頬を膨らませた。腰のかわいいリボンと裾に雫の模様が描かれた衣装は後宮らしくてとても華やかだが、草引きをするにはひらひらとした袖がかなり邪魔そうだ。
メイジーの雀色の目が見つめる先で、ぶちっと草をちぎる音が響いた。
「ことあるごとに呼びつけて! 私たちは、グレイシア様に仕える侍女でも端女でもないのに!」
ぷんぷんと怒りながらも次々とむしっていくのは、完全に草への八つ当たりなのだろう。
「まあまあ」
実家の庭で草引きには慣れているため、つい宥めるが、メイジーからしたらオリアナの平然とした態度が信じられないらしい。
「オリアナは腹が立たないの? いくら私たちが爵位の低い貴族の出身とはいえ同じ側妃なのに! 後宮での序列が下だというだけで、こんな扱いをされるなんて」
「それは、まあ――気持ちはわからないでもないけれど……」
この後宮で親しくなった妃の言葉につい返事を濁してしまうのは、オリアナは部屋の中に閉じこもっているだけの状態よりも、太陽の下の方が好きだからだ。
「でも、さすがはリーフル宮の雑草よね。他の場所に比べてなんて元気のいいこと」
緑の草を掴んで根っこから引き抜いていると、故郷の庭で母と一緒に手入れをしていた昔を思い出す。実家の雑草もなかなか手強かったが、このリーフル宮の草花の勢いはその比ではない。
(さすがは名だたるリーフル宮!)
黒い影を落とす後宮の木陰で賑やかに鳴いているのは、ミンミンゼミだろうか。声だけを聞いていると、今が夏の盛りのような錯覚に陥ってしまう。
いや、夏の盛りのようなのは周りの蝉の声だけではない。今、手の下にある引き抜かなければならない草たちの茂り具合は、どう見てもこの強い日差しの賜物だ。
「なんで、私たちが草引きなんて!」
目の前で手の平ほどのサイズにまで伸びた草を引き抜きながら、同じ棟に住むメイジーはぷうっと頬を膨らませた。腰のかわいいリボンと裾に雫の模様が描かれた衣装は後宮らしくてとても華やかだが、草引きをするにはひらひらとした袖がかなり邪魔そうだ。
メイジーの雀色の目が見つめる先で、ぶちっと草をちぎる音が響いた。
「ことあるごとに呼びつけて! 私たちは、グレイシア様に仕える侍女でも端女でもないのに!」
ぷんぷんと怒りながらも次々とむしっていくのは、完全に草への八つ当たりなのだろう。
「まあまあ」
実家の庭で草引きには慣れているため、つい宥めるが、メイジーからしたらオリアナの平然とした態度が信じられないらしい。
「オリアナは腹が立たないの? いくら私たちが爵位の低い貴族の出身とはいえ同じ側妃なのに! 後宮での序列が下だというだけで、こんな扱いをされるなんて」
「それは、まあ――気持ちはわからないでもないけれど……」
この後宮で親しくなった妃の言葉につい返事を濁してしまうのは、オリアナは部屋の中に閉じこもっているだけの状態よりも、太陽の下の方が好きだからだ。
「でも、さすがはリーフル宮の雑草よね。他の場所に比べてなんて元気のいいこと」
緑の草を掴んで根っこから引き抜いていると、故郷の庭で母と一緒に手入れをしていた昔を思い出す。実家の雑草もなかなか手強かったが、このリーフル宮の草花の勢いはその比ではない。
(さすがは名だたるリーフル宮!)