シュガートリック




「と、突然すみません……!」

「……っ」

「え、えっと……っ俺、」


声をかけられる度にビクッと肩が跳ね、俯いてしまう。
……どうしよう、どうしよう。声をかけられてしまった。
鞄を持つ手が震え始めて、ギュッと目を閉じる。

こういうときどうすればいいかわからない。
目を合わせなきゃ失礼なのは分かるけど、顔が上がらなくて。
怖くて声が震えてしまうから、あまり声は出したくない。

心臓がバクバクとうるさく響き始めて、焦りから冷や汗が出てくる。
そんな私を知らない目の前の男の人は、オドオドしながらも私になにか言いたそうにしていて。

この人は、何も悪くないのに……っ。
……っ、もうやだ、どうしよう……っ。
流歌ちゃん……っ!


「……っ俺、花染さんのこと────」

「ねぇ、こんなとこでなにしてんの?」

「……っ、へ?」


男の人が何か言いかけたその瞬間。
私の後ろから、そんな声が聞こえてきて。



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