Good day ! 3【書籍化】
しばらくすると、医療用のガウンを着た大和が入って来た。

「恵真」
「大和さん…」

優しく名前を呼ばれた瞬間、思いがけず恵真の目に涙が浮かぶ。

大和は、恵真の頭のすぐ横の椅子に座り、恵真の顔を覗き込んで微笑む。

「大丈夫、そばにいるからね」
「うん」

大和は頷くと、両手で恵真の右手を握りしめた。

「大和さん?何か持ってる?」
「ああ。これ」

大和は手を開いて恵真に見せる。

大和が握っていたのは、今朝恵真が病室に置いてきた結婚指輪と誕生石の羽のネックレス。

肌身離さず着けていたかったが、手術では外さなければいけないと言われ、仕方なく病室に置いてきたのだった。

「良かった、嬉しい…」

恵真が微笑むと大和も頷き、しっかりと恵真の手と一緒に握りしめた。

「それでは、始めます」
「よろしくお願いします」

医師達の声で、手術室の空気が変わる。

恵真はそっと目を閉じ、大和の手の温もりを感じながら祈るようにその時を待つ。
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