A Maze of Love 〜縺れた愛〜

SIDE 1 ナギ

 信号が青に変わり、歩行者が一斉に動き出す。
 その中で、ひときわ目を惹く美しい男性に川上渚は手を振る。

 柴田大翔(ひろと)。渚の大好きな彼。

 大勢のなかにいても、すぐに見つけられる。

「大翔」
 渚に気づいても彼は駆け寄ってくるようなことはしない。
 ゆっくり近づき、何も言わずに肩を抱く。
 そんな、そっけない素振りも渚にはたまらない。

 肩ぐらいまである長い髪も、前髪からのぞく長い睫毛に縁どられたアーモンドアイも、真っすぐな鼻梁も、形の良い唇も、少しとがった顎も、そのすべてが渚にとって好ましいものだった。

「そこに入るか?」
「うん」

 大翔が指し示したのは、駅前のファストフード店。
 お互い大学生で、お金はあまりないから、おしゃれな店でのデートとか興味ない。

 それよりも渚は、さっさと腹ごしらえして、早く大翔とふたりきりになりたかった。

 彼も同じ気持ちなのだろう。
 渚はそう思っている。

 それにハンバーガーにかぶりつく大翔を見るのも好きだった。

 唇についたケチャップを舌で舐めとるところなんて、とてつもなくセクシーで、早くキスしたくてたまらなくなる。
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