A Maze of Love 〜縺れた愛〜
***

 適当に選んだホテルの部屋で大翔がシャワーを浴びている最中、ベッドサイドに無造作に置かれていたスマホに着信があった。
 
 見るともなしに目に入ってきたその待ち受け画像に違和感を覚え、渚は暗くなったスマホ画面に触れ、もう一度画像を表示させた。

 少し色褪せた色調の写真のようだ。
 かなり昔に撮られたように見える。

 畳敷きの広間でふざけ合っている同い年ぐらいの男の子と女の子。
 
 祖父母の家とか旅館とか、そんな感じのする古い日本家屋で撮影されたもののようだ。

 なんで、こんな古めかしい写真なんか、待ち受けにしているんだろう。
 らしくないんだけど、ぜんぜん。

 出てきたら聞いてみようかな。
 ああ、でも、やめとこう。
 見てないところでスマホをチェックする女、とか思われるのも心外だし。

 そんなことをつらつら考えていると、バスルームのドアが開く音がして、長めの髪を後ろに流し、腰にタオルを巻いた大翔が戻ってきた。

 目の前にそんな恰好で来られると、渚の心拍数はすぐに上がってしまう。

 少し盛り上がった上腕や引き締まった腹筋、すんなり伸びた脚。
なにもかも完璧。

 そんな大翔の彼女でいられることが誇らしい。

 ずっと彼と一緒にいたい。
 大翔といるときもいないときも、渚の心を占めているのは彼のことだけだった。
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