A Maze of Love 〜縺れた愛〜
「愛? 何、寝ぼけたことを言ってるんだ。結婚は契約だ。それ以上の何物でもない。凪咲の母親は、言うなれば、私に凪咲を売ったんだ。生活の安定のためにね。私はその対価を自分の満足のために使うまでだよ」

 こいつは壊れている。
 大翔は壁に向かって話しているような虚しさを感じた。
 
 喜色満面の上機嫌で一馬が言う。
「ああ、いい気分だ。お前のその顔が見たかったんだよ」

 すぐにその表情は奇妙に歪んだ。

「大事な人を奪われる、四肢を引き裂かれるような苦しみを味わわせたかったんだ。お前ら親子のせいで、母さんがどれほど苦しんだか思い知らせたかった」

 次の瞬間、大翔の体に電流が走り抜けた。
 一馬がスタンガンを大翔の首筋に当てたのだった。

「な、何を」
 ショックから立ち直る前に、今度はみぞおちを思い切り殴られた。
 大翔はその場に倒れこんだ。
 
「お前たちのせいで、私と母さんがどれほど苦しんだか。思い知らせてやる」
 一馬は大翔を蹴り飛ばした。
 大翔は頭を抱えて、絶え間なく襲う痛みに耐えていた。
 
 容赦なく蹴りを入れてくる一馬の脚をなんとかつかんだけれど、すぐに手がほどけて、また蹴られた。
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