A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 それから、ふたりが恋人になるまで時間はかからなかった。
 
 次の日、彼の部屋を訪ねると、まるで旧知の友達のように「あがって」と言われた。

 渚はためらわずに部屋にあがった。
 彼を敬遠する気持ちはまるでなかったから。

「名前は?」
「あ、川上渚です」
 その人は意外そうに目を丸くした。
 
「渚……っていうのか」
 そんなに珍しい名前でもないのにと不思議に思ったけれど、それは聞かずに「うん、あなたは」と聞き返した。

「柴田大翔。M大の3年」
「えっ、本当ですか?わたしもM大生です。文学部の2年」
 
 わあ、同じ大学の先輩だったのか。
 でも、この町はM大生が多いから、そんなに驚くことではないかもしれないけれど。
 
 1時間ほどたわいのない話をした。
 お互い、大学でどんなことをしているかとか、友達のこととか。

 そろそろ話題もつきかけたので、立ち上がった。
 
「じゃあ、わたし帰ります」
「あ、ああ」

「本当にありがと……」
 頭を上げると、思ったより近くに彼が立っていた。
 腕が渚の背に回り、気がつくと抱きしめられていた。

 頭二つ分ほど背の高い彼は、わたしの髪に顔を埋めて「好きになったみたいだ」と囁いた。

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