ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜



 魔法の家庭教師がやって来て、授業が始まる。
 今日は簡単な講義のあとに、体内に巡る魔力の流れを感じ取るのが目標だ。

 コートニーは、おもむろに目を閉じて、両手に精神を集中させて体内に巡る魔力を集約させる。
 集中……集中……魔力を集中…………、

 集中………………、

 ………………、

 ………………、


「はいっ!」家庭教師がポンと手を叩く。「コートニー様、本日はここまででございます。いかがですか? 魔力の流れは感じましたか?」

「へぇっ……!?」

 コートニーは、つぶらな瞳をぱちくりさせた。
 正直、分からなかった。ベッドに入って目を閉じるように、ただ瞼を下ろしているだけ。

 自分の腹の底に鉛のような重たいなにかを感じた気はしたが、それだけだ。
 家庭教師や異母姉は血管を巡るように全身に魔力の波が流れ出すと言っていたが……なにも起こらなかったじゃないか。
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