ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜


 クロエは、今日は夜空をイメージした少し大人びたドレスだ。

 胸元の鮮やかな群青色から下に向けて暗くグラデーションになっていて、エンパイアラインのスカート部の下の方には銀糸で煌めく星々を表現していた。
 オーガンジーのレースでできた袖部分は、規則的に水玉模様の銀糸の刺繍が施されて、昼間のお茶会でも浮かないように少々カジュアルな雰囲気に仕立てた。

 今日はスコットが「自分がドレスを用意する」と言い張っていたが、クロエは「王宮主催の正式な行事の時にお願い」と、適当に理由を付けて固辞した。

 彼は、きっと逆行前と同じような、良く言えば清楚、悪く言えば地味なドレスを選ぶだろう。
 それは、今の自分には相応しくない。
 復讐を誓った女には、甘ったるいドレスなんて必要ないのだ。

 それに一番の本音は、彼からドレスを贈られるなんてまっぴら御免だった。
 仮に彼の瞳の色のドレスなんて用意されたら、激情に駆られてその場で引き裂くかもしれない。

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