ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

49 三人で仲良くお茶会です!③

(さて、どうしようかしら……)

 クロエは周囲をそっと見やる。一身に浴びる視線に苦笑した。
 今の状況は五分五分だろうか。
 でも、だんだんと旗色が悪くなっていくのを感じる。
 貴族の中にはノブレス・オブリージュを重んじる者も多い。しかもまだ世間に揉まれていない若い貴族なら、なおさらだ。

 最悪な状態に持って行かれる前に、早く手を打たなければ……!



「コートニー、ごめんなさい」

 クロエの瞳からぽろりと大粒の涙が溢れた。そして周囲の同情を誘うように、大袈裟に嘆く。

「あなたがこんなに苦しんでいたなんて……私は最低な人間だわ……! 本当にごめんなさい…………うぅっ……」

 今度は姉のさめざめとした泣き声が、場内に静かに響いた。異母妹とは違う聖女らしい控えめで上品な涙だ。

(そっちが捨て身の攻撃なら、こちらも恥を捨てるわ……!)

 高貴な身分の者が人前で感情を露わにすることは、はしたないことだ。コートニーの嗚咽する姿も、本来なら「みっともない」と切り捨てられる行為である。
 
 しかし、コートニーはそれを逆に利用して「可哀想な被害者」というポジションをたちどころに築き上げた。現に、彼女は悪くないのではないか……と思い直した貴族たちもいる。

 ならば、自分はその上を行くだけだ。
 もしかすると、パリステラ家の令嬢をひとくくりにされて評価が下がるかもしれない。
 だが、自分たちはまだ未成年。少しの失敗など大目に見られる年齢だ。これからまだ十分に汚名は返上できる。
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