ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

59 異母妹が魔法を使えるようになりました!

 それは、突然の出来事だった。


「コートニーが魔法を発動させただと!?」

 ロバートは、目を剥いて息を呑む。クリスは厚化粧の顔を上気させて、興奮気味に旦那様に報告を始めた。

「そうなのです! 今日の授業中に突然! しかも、かなりの強い魔力だそうでっ!!」

「そうか……!」

 侯爵は思わず破顔する。にわかに嬉しさが込み上げて来た。
 やっと……やっとだ。
 姉と違って使い物にならないと諦めていた妹が、ついに魔法を使えるようになったのだ。それも強力な魔力らしい。
 やはり、あの子もパリステラ家の血筋だった。これで家門も安泰だ。

 ロバートはすぐさま愛しい娘のもとへ向かって、抱き締め、抱き上げ、頬にキスをして、頭を撫でて、大いに褒め称えた。
 コートニーもとっても嬉しそうに終始笑顔で、久し振りに降り注がれた父の愛情を、大いに享受する。

 これで、やっとお父様から認められた。お母様のガミガミうるさいお説教からもおさらばだ。
 きっとまた、別邸にいた頃のように親子三人で仲良く暮らせるはず。お父様もお母様もまた愛し合うはず。だって、あたしは凄い魔法使いなんだもの。

 あとは邪魔な異母姉を排除して、婚約者を奪うだけだ。

(見てなさいよ、あの女。絶対に潰してやるわ……!)

 その日は、ロバートとクリス、コートニーで王都の中心街へ向かって、父親は娘の欲しいものはなんでも買ってあげた。妻にも一等級の宝石をプレゼントした。
 それから予約が一年待ちのレストランで食事をして、彼らにとって夢のような最高の一日だった。


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