ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

63 魔法大会です!④

「かはっ……っつ…………」

 クロエは地上に上がって、思い切り息を吸い込んだ。
 冷たい空気が急激に肺に入り込んで、満杯になって破裂しそうだった。
 誰かが背中をトントンと叩いてくれて、リズムに合わせて呼吸をする。だんだんと落ち着いてきた。

「クロエ、大丈夫か?」

 顔を上げると、ユリウスが酷く心配そうな表情でクロエを覗き込んでいた。途端に安堵感が彼女を包んで、全身の力が抜けた。

「あり……がとう……。私、水中でパニックになっちゃって……」

「いきなり深い水の中に落とされたら誰だって混乱するよ。君が無事で良かった」

 水中での出来事を思い出すと、ぶるりと身体が震えた。
 暗い水の中、呼吸ができなくて、胸がどんどん苦しくなっていって。地上へ戻れると思ったら足を掴まれた。あの瞬間は、恐怖で背筋が凍った。

「私の足を……闇魔法が……」

「あぁ。彼はどうやらパリステラ侯爵夫人と関わりがあるようだな」

 彼女は頷く。キンバリー帝国の「影」の調査で、継母が闇魔法の集団に関わっていることが判明した。彼女はそこで継子の魔力を奪う、または自分の娘に継子の魔力を移す――という方法を探していたようだった。
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