ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

76 二人をどうしても許せませんでした……! ※人権無視の不快な描写あり※

「継母と異母妹が逃げただって?」

 信じ難い情報に、ユリウスは目を白黒させた。

「そのようです」側近のリチャードは深刻そうな顔で頷く。「間諜によると、メイドが今朝がた牢に食事を運びに行ったら、忽然と消えていたとか」

「王がお怒りで厳重に警備をしていたのに……脱走なんて可能なのか?」

 パリステラ家の次女の二度目の不祥事、おまけに高位貴族の闇魔法の使用という国家への裏切り行為で、国王の怒りは凄まじいものだった。
 見せしめとして、王都の広場で大々的に処刑を行えと命令を出したのも王自身だ。
 だから、逃がすことなど絶対にあり得ないと思うのだが……。

「警備兵も全く気付かず、脱走の痕跡も残っていないようです。彼らは口を揃えて『まるで時が止まったようだ』と……」と、リチャードは戸惑った様子で言った。

「時が、止まっただと…………まさか!」

 ユリウスはがたりと勢いよく立ち上がる。心当たりはあった。
 おそらく……いや、ほぼ確実にクロエだ。彼女が裏で糸を引いているのは明白だった。

 一体、なんのために?

 嫌な予感が頭をよぎる。
 きっと彼女は……処刑などという生ぬるい罰では許さないからだろう。それほど継母と異母妹を憎んでいるのだ。

 彼女の胸の中の憎悪の炎は……今もまだ燃え続けている。

< 393 / 447 >

この作品をシェア

pagetop