ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

79 建国祭の儀式

 年に一度の建国祭では、神殿で重要な式典が行われる。
 高位貴族たちの家門の代表が集って、国の境に結界を張る儀式だ。

 彼らは王都の神殿に集まり、建国神である初代国王の祭壇の魔法陣へと魔力を注ぐ。
 そこを起点として、国境にある五箇所の魔法陣へと魔力が広がって、結界を張り直して完了となる。

 儀式では、どの家門が一番魔力を注入したかが注目されていた。
 魔法陣には定められた器がある。強い魔力の持ち主は、他の者を押し退けて自身の魔力をそこに押し込むのだ。

 その年に一番の魔力量を捧げた家門は、国王から特別な勲章が与えられる。また、家門自体の権威も示せるので、毎年どの貴族も気負い立っていた。

 この儀式に参加できるのは侯爵家以上。
 当主が家門の中から代表を選ぶという形だが、基本的にはその家の当主自身が、己の威厳を誇示するために役目を担っていた。

 パリステラ家も、ずっとロバートが代表になっていた。彼はこの儀式に命をかけていたと言っても過言ではない。
 事実、彼は毎年のように勝利していたのだ。屋敷の応接間には、これまで彼が勝ち取った国王からの勲章がずらりと陳列されていた。

 彼はなんとしても「建国からの魔法の名門パリステラ家」という称号を保持したかった。
 それが、己の使命だと思っていた。

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