ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

85 暴動

「聖女――いや、偽聖女を出せーっ!!」

「あの女は魔女よ! 人殺し!」

「今までよくも騙してくれたな!」

 パリステラ家の門の前には、多くの平民たちが集まって、騒然としていた。
 憎しみの内包された沢山の瞳が、クロエを見据えている。緊迫した空気が、瞬く間に屋敷を包み込んだ。

「こ、これは……どういうことだ……?」

 ユリウスは動揺を隠せずに、微かに身体を仰け反らせる。
 それは、彼が子供の頃に読んだ本――幼心に物凄く恐怖を覚えた、平民たちが立ち上がる革命のシーンと同じ状況だったのだ。

「……下へ行くわ」

 一方、クロエは眉一つ動かさずに、踵を返す。この状況に少しも動じない彼女に舌を巻きながら、彼も慌てて後を追った。
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