来世、君に「愛してる」と言う。
しかし我に気づけば、哀れになるほど弱々しげに微笑む彼が目の前にいた。
瞳は不意に大きく見開かれ、
「…どうして。どうして、泣くんだよ。」
と形の良い唇から小さなつぶやきを漏らす。
悲嘆、戸惑い、焦燥、苦しみ、葛藤、怒り、つらさ。
ずっと我慢しようと努力したのであろう感情の動揺。
ふるふる震えた真っ青な唇の間からしぼり出される声。
その悲痛な響きは、言葉にできないような感情たちまでを露わにしている。
少しの戸惑いと共に、私の喉はグッと締めつけられた。
今日、こんなに恐怖に怯えた表情を、彼は少なくとも私に、はじめて見せた。
私の知る彼の背中はいつだって頼もしかった。
でも彼は今、幼子のように小さくて。
今にも壊れてしまうんじゃないかと思うほど体をぴくぴく痙攣させている。
必死で涙を堪え、呑み込んでいるように見えた。
彼が、私に最後の別れの日まで自身を印象付けていたイメージ。
“決して弱さを見せず、ただただ強い人。”
その認識を彼は、壊してしまった。
しかし雀の涙に満たぬ力もない私には、自分が彼に何をしてあげられるのかさえ分からない。