小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

「え?何ですか?最後聞こえなかったんですけど……」

「美鈴。この後どうする?すぐに帰るか?」

「そうですね。まだ五時半なので、一旦図書館へ連絡してみます。問題なければ退勤しても許されるかもしれません。先生は?」

「俺はまだ無理だ。もし帰るなら気をつけろよ」

「はい。一度、アパートに行きたいんです。さすがに片付けないと……」

「確かにそうだな。でもひとりで行くのはまだやめておけ。隆君のことだが、明日のカンファレンスで決まるので……」

 この間言っていた移植のはなしかもしれない。

「隆君。良くないんですか?今は?会いに行きたいんですけど……」

「実のお母さんが来るようになった。だから、君は姿を見せるとまた柊さんのこともあるし、やめておいたほうがいいだろう。隆君は会いたいかもしれないけれどね」

「……そんな!元気づけてあげたいのに。子供に罪はありません。大変な病気と戦っているんですから」

「確かにそうだな」

 転院が決まるとしたら明日。何かしてあげたい。急がないと間に合わない。
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