小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 受付を見ると、彼女の席の椅子が回っている。抜け出して来たんだな。
 周りの人はこちらを呆れた目で見ている。困ったものだ。事務管理者も注意できないのは周りにいい影響はない。

 「患者をこんなに待たせて、席を外すなんてよくない。すぐに戻った方がいい」

 「だって、こうしないと先生と話せないんだもん」

 腕を取ろうとするので、手を払った。初めて手を払われたので驚いたのだろう。すごい目で睨んでいる。

 「先生、ひどい……私達……」

 「仕事中だ。失礼」

 遮るように話して、戻った。後ろで睨み付けている。

 患者さんも驚いて見ている人がいる。病院にとっても、俺にとってもマイナスでしかない。

 後ろから看護師が付いてきた。小児科の看護師だ。

 「先生。おはようございます。朝から大変ですね」

 「ああ、おはよう。全くだ。患者さん達も見ているのに、何を考えているんだか」

 「それはもちろん、先生に優しくしてもらうことしか頭にないんでしょう。周りが見えていない、典型的な恋の盲目現象?」
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