女風に行ったら、モテ期がきた

営業マンの押しが強い

暑気払いの会場は、レストランのテラス席を貸し切った、おしゃれなビアガーデンだった。料理は美味しいし、お酒の種類も多く、一言で表すとしたら、まさに最高だ。

会場の隅っこで、お酒と料理を堪能していたら、随分と若い男の子が近づいてきた。

「経理の石川さんですよね?僕、営業の長谷川(はせがわ)です!」

「あ、はい。お疲れ様です」

「石川さん、グラス空いてるじゃないですか!これ、まだ口付けてないんでどーぞ!」

「あ、ありがとうございます」

「石川さん、最近雰囲気変わったって大評判ですよね?本当、凄く綺麗で、僕、驚いちゃいました!」

「え?あ、はあ、、」

「彼氏はいますか?僕、26なんですけど、石川さん的に、ありですか?なしですか?」

「、、なしですかね?」

「ぐはっ!瞬殺!」

あまりの勢いに呆気にとられていたら、彼の先輩らしき人が数人寄ってきた。薄暗いので眼鏡なしでは、顔認証は不可能だろう。

「おい、長谷川!おまえ、何だる絡みしてるんだよ!本当、すみません」

「いえいえ、大丈夫ですよ」

「高城と同期で、今日の幹事の前田(まえだ)です。ちゃんと話すの、はじめてですよね?」

「俺は前田さんの1年下で、営業やってる山下(やました)です」

「営業の今井(いまい)です!29歳です!」

怒涛の自己紹介ラッシュで、何も頭に入ってこなかった気がする。まあいいか。

「お疲れ様です。経理の石川です」

「俺達全員独身なんですよ!誰が一番好みですか?今なら選びたい放題ですよ!」

長谷川君を注意しておいて、結局だる絡みしてくるとは、、営業部はどうなってるんだ?とりあえず、笑ってごまかしておこう。

その後、営業の人達が入れ替わり立ち替わりやってきて、次から次にお酒をすすめられ、完全にペースを乱された私は、いつしかぐでんぐでんに酔っていた。営業、まじで、恐るべし。

「高城さん、大変!ミキさんがいつの間にか潰れちゃってますよー!」

「え?石川さんが!?」

「営業の人達に超ー飲まされてましたよ!ミキさん酒豪だから大丈夫だと思ってたのに!どんだけ飲まされたの!?」

「すまん、高城!平気そうな顔してたから、飲み過ぎてるの、全然気づかんかった!」

「おまえら!まじ、ふざけんなよ!?」

高城君が怒ってる?珍しいなー。

ああ、、せっかく発作を起こさず楽しく飲んでたのに。まさかの酒落ち、、これは一生の不覚だな。
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