女風に行ったら、モテ期がきた
そんな気はしていたが、女は私ひとりだけしかいなかった。そりゃそうだ。みんな結婚して子供がいるから、飲み会なんてこないよね。

すぐに帰るつもりだったのに、それすらもうまくいかず、居心地の悪過ぎる時間がひたすら続く。

「石川はスタイルいーよな!うちの嫁さんなんて、子供産んでからブクブク太りやがって、あれじゃ詐欺だよなー?」

「やっぱ女は結婚して子供産んじゃうと駄目だな!石川!おまえの正しさが証明された!」

「本当、独身で羨ましいよ!聞いてるよー。石川、最近イメチェンして、営業の若い男達、食い散らかしてるんだって?」

「いーなー!俺なんて嫁さんに拒否られて、もう何年もレスなんだよ!?なんのために結婚したかわかんねーよ!」

ここは地獄か?なんで私はここにいるんだ?これ、私がいるのなんか意味ある?むしろいない方が、心置きなく語れるんじゃない?

最近、私の周りにはいい人ばかりいたんだなと実感した。現実なんてこんなもんなのかもしれない。死んだ母が言ってたじゃないか。『男なんて、ろくなもんじゃない』って。本当、その通りだった。

いい加減、そろそろ帰らせてもらおう。お金を置いて席を立つ。あ、その前に、、

「あのー私が営業の若い男達を食い散らかしてるって、嘘ですから。私は誰も食ってないし食われてもいないので、変な噂を流さないで下さいね?」

店を出て、大きくため息をつく。近年稀に見るほどの、最低最悪な飲み会だった。

気分が悪過ぎる。近々、杏子を誘って毒抜きしよう。

そんなことを考えながら、駅に向かって歩き出すと、後ろから声をかけられた。

「石川、ちょっと待って!」

まだ飲んでいたはずの高宮君が、私を追ってきたらしい。何故だ?

「ふたりで話したくて出てきたんだ。まだ時間平気だろ?」

「ごめんなさい、なんか気分が悪いから、もう帰りたいんだけど」

「気分が悪いなら、どっか入って休んだ方がいいだろ?俺、ちょうどいいとこ知ってるし」

高宮君が私の腰に手を回す。この男、何言ってるの?まさか、私をホテルにでも連れ込もうとしてる?

「え?ちょっと、どこ行くつもり?」

「そんなもったいつけんなよ。色んな男とよろしくやってるんだろ?俺にもいい思いさせてくんない?」

「は!?何言ってるの!?」

「そんな大騒ぎするような歳でもないだろ?ごちゃごちゃ言ってないで早くこいよ!」

高宮君が腕を掴んで強引に引っ張るから必死に抵抗する。だが、力でかなうはずがない。やばい。怖過ぎる。どうしよう。

「石川さん!」

もう駄目だと諦めかけた時、まるでドラマか何かのように、ヒーローが現れた。これが夢や幻ではないことを祈りたい。
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