女風に行ったら、モテ期がきた
部屋は私が出た時のままの状態で、侵入されたような形跡は残ってなかった。

「荷物はこれだけ?足りますか?」

「ええ、衣類は汚されてしまったので、最低限しか揃えられてなくて」

「汚された?盗まれたんじゃなくて?」

「盗まれたのもありますが、犯人が寝室で、私の服を使って、、その、、良からぬことをしたらしくて」

「あー、嫌なこと思い出させてすみません」

「いえ、大丈夫です、、」

「次の休み、俺手伝うんで、部屋を徹底的に掃除しましょう!」

それはありがたい。ひとりではやれそうもなくて、業者に頼もうかと思ってたのだ。

その後、タクシーを拾って高城君の家へ移動した。

「ちょっと待ってて下さいね。今、風呂入れ直すんで」

「いや、家でシャワーを浴びたし、お風呂は大丈夫ですよ?」

「お湯に浸かってから寝た方がいいです。その方が、きっとよく寝られる。今日は俺の言うこと聞いて下さい」

高城君の言ったことは正しく、言われるままお湯に浸かってみると、更に体の力が抜けていくのを感じた。自分で思ってる以上に、感覚が麻痺してるのかもしれない。

「お風呂、ありがとうございました。気持ち良かったです」

「シーツ、交換しといたんで、ベッド使って下さいね」

渡された水を飲んでいたら、高城君がまたそんなことを言い出すので、慌てて断る。

「そんな、ベッドは高城君が、、」

「今日は俺の言うこと聞くんでしょ?」

今日の高城君はいつもと違って押しが強い。

「、、わかりました。ありがたく、使わせてもらいます」

「じゃあ、おやすみなさい」

寝室に入り、電気を消すか迷って、そのまま布団に入った。

リビングからは、まだ何かしてるらしい高城君の気配を感じる。高城君の匂いがする布団に包まれ、ほっと息を吐いた。

『優しくされて嬉しい、そばにいて欲しい、一緒にいたい、会えて嬉しい、いい匂い、、』

目をつぶると、杏子が前に言ってたことがふと頭に浮かんで、その後間もなく、私は眠りに落ちた。

朝、目が覚めると、高城君が朝食の準備をしてくれていた。

「しばらくは不便かもしれませんけど、石川さんが安心できるまでは、ここにいて下さい。そうじゃないと、俺が安心できないんで」

「凄く助かります。それならお世話になってる間、夕飯は私に用意させて下さい。大したものは作れないですけど」

「本当に?それは、、嬉しい。役得だな」

どうやら照れているらしい。ちょっとかわいいな。だけど私も、忘れかけてたテロリストの存在を感じた気がして、慌てて眼鏡を外す。

「ん?どうかしましたか?」

「いえ、なんでもありません」

「、、?」

高城君が不思議そうな顔を向けてくるから、私は下を向いて顔を隠すしかなかった。
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