うわのそらでも恋がしたい。

こてん,と私は首を右に傾ける。

やけにスローに見える湊くんの唇が,私一人に向かって開いた。

そして視線が少し外される。



「このおもわせぶり」



おもわせぶり,とは?

んー? と,私はくうを眺めた。

その私を捕まえるように,湊くんが私の横髪を掬う。



「恋がしたいだけなら,僕でいいじゃん」



一瞬ふいに開かれた瞳は,直ぐにじわりと小さくなった。



「……なんで?」
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