うわのそらでも恋がしたい。
「何それ。かもって,すきって,どういうこと?」
ぎゅっと捕まえるように5本が固定された。
「ん~,多分。ほんとは私,誰でもいいんだろうなって,そういう意味。私,納得と根拠が,欲しいだけなの。……ひとなみの,恋がしてみたいの」
漫画みたいな,恋がしたい。
いつも好意の先にいるような湊くんには,まだ分からないかな。
すとんと,私は近くの真っ白なベンチに座る。
繋がった手とは逆の方でとんとんと隣を叩けば,湊くんも座った。
どうせ湊くんと一緒なら目立つんだもん,どこで何をしていようと変わらない。
周りの視線を多く受ける中,私は湊くんへ視線を向ける。
まだ,離さないのかな。
湊くんは私と違う思いがあるのか,微妙にリンクしない感情でじっと見つめ返した。