極悪人の抱き枕になりました。
☆☆☆

翌日目を覚ました夏波は見慣れない部屋に戸惑った。
そしてすぐに自分が伊吹の部屋に連れてこられたことを思い出す。


「そうだ、仕事……」


と、呟くけれどスマホを取られてしまっているので誰にも連絡を入れることができない。
今日の顧客はすべて無断キャンセルすることになっしまうけれど、個人事業主でよかったのかもしれない。

無断キャンセルになってしまった顧客達には後日無料券を配って誠心誠意謝罪しよう。
そう決めて気を取り直す。

大型テレビをつけてみると10時を過ぎていることがわかった。
こんなにのんびり眠っていたのは久しぶりのことで驚く。

こんなよくわからない男の家で熟睡してしまったことになる。
自分の神経は思いの外図太いのかもしれない。

夏波は自分に呆れて笑いながらキッチンへ向かった。
しっかり眠ったせいか、お腹はペコペコだ。
一旦寝室を覗いてみたけれど、伊吹が帰ってきた様子はなかった。
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