婚約とは安寧では無いと気付いた令嬢は、森の奥で幸せを見つける
 私が父に母に叔母に伯父に、極めつけは長年の使用人にまで訴えられた。

 願いは一つ、王子との婚礼。

 (おそ)れ多くも侯爵家の血筋に連なってしまった不出来な魔女は、王子が見初めたと幸いに、その身を分不相応に王族の架け橋として送り込まれた。
 間者だろう? ドレス姿の灰かぶれ。
 所詮に蝶よ花よと育てられた小僧様のお心なぞ、掴んで見せろとお達しが下ったのだ。
 が、その実として手にしたものは一人前の無様のみ。
 化粧はお嫌い? だから、頬に紅葉も咲かせてくれたか。これも成程。
 
 しかし上辺の化粧に囚われ、己の全てに白を纏った女の正体は見抜けないようだ。

「その目障りの極まる所も見えん女の処遇に、寛大にも俺の聖女は永久の退場を願って終わりにすると。わかるか? その目に雫を滾らせ心を崩した少女の頼み!!」

 わからない。

「貴様に相応しきを与えると言った! この俺の慈悲を以って魔女には緑が似合うとなッ!!」

 傍らに聖女様を抱き寄せた。
 集められた観客がグランドフィナーレに喝采を上げる。
 ああ、なんと素晴らしい芝居だか。思わず喉の奥まで熱いものがこみ上げてくる。
  
 そのご尊顔にブチまけてしまうのも惜しいくらいだ。
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