演歌界のイケオジ『神月京介』の恋心
 二月上旬。

 毎年この時期、ひとりで一泊二日のスキー旅行へ行く。

 今年も来た。予定では、朝早くに家を出て山へ行き、スキーを夕方まで滑り、毎年お世話になっている小さなペンションに一泊して次の日に帰る予定だったんだけど。

「交通マヒしてるな」

 ペンションのオーナーが次の日の朝、食堂でスマホを見ながら呟いた。テレビでも吹雪のニュースばかり。

 夜中吹雪になり雪が積もりすぎて、身動きがとれなくなった。

 つまり、予定通りに帰れない。

 天気予報でも雪が積もるってのはチェックしていたけれど、そんなの日常茶飯事だし、いつも通りに帰れるだろうと気軽に考えていた。しかも降り続いていて山奥だから除雪もいつ入るか分からないし……。

 とりあえず勤めている会社に電話をして、事情を説明し休みを貰った。

 ここは小さなペンションで、木のぬくもりが感じられる。六十代後半ぐらいのオーナーが親切で人間味溢れて、居心地が良い。そんなところが気に入り、もうかれこれ五年ぐらいお世話になっている。

 一階が食堂やトイレ。男女別に分かれたお風呂。そしてオーナーが眠る寝室。二階には客が泊まる部屋が五部屋ある。
 
 電波はギリギリって感じだけど、なんとかスマホでネットは見れる。天気予報を確認すると雪マークだらけ。

 きちんとチェックして、別の日にこればよかったなぁと今更ながら反省をした。

「まぁ、ご飯もこっちで準備するしライフラインも大丈夫だから、ゆっくりしていって?」

 オーナーが落ち着いた口調でそう言った。オーナーがそう言うと、焦っていた気持ちが落ち着いてきた。

 泊まった客が今いる食堂に集まってきた。
 私は二階からおりてきたひとりの客を見て全身が震えた。

 なぜなら、その人は私の初恋の人だったから――。
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