神様の寵愛は楽ではない

1-2

「なぜにわれが、力にものをいわせる下級武士風情のお前の妻にならねばならぬのか。その身なりでは、われにこの世での極上の贅沢のひとつもさせてもらえないだろうに?」

 傲慢に鼻をならし、美奈は言い捨てた。
 その冷たい拒絶の言葉が胸に突き刺さっても、言葉の刃は男の中で喜びに変わるようだった。

「わたしがあなたを妻にできるのなら、この世の魑魅魍魎からあなたを庇護し、わたしの心を捧げ、存分に愛し、寿命のつきるまで末長く慈しんで差し上げます。
 わたしにはその力があります。どうかその手を取らせてください。その艶やかなお体をこの腕に抱かせてください……」

 男のもとめる言葉のまま、体が縁側に向かいにじりよりかけて、娘は踏みとどまった。
 明日から輿入れの準備が始まる。
 庶民に生まれながらも美しいといわれた娘ならば、いちどは夢見る最高の夢物語が実現するのだ。
 簡単に引き下がりそうにない男に、美奈はとうとう癇癪を起こした。

「どうやってここまではいってこれたか知らないが、われを得ることができるのは、この世の栄華栄達を極めたあのお方だけ!
 そのお方は、おまえが御大層に守るという卑しいあやかしごときからなど、われを守るように差配することなど容易いであろう!
 護衛のものに切り捨てられる前に、尻尾を巻いてとっとと帰るがよい!」
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