いつも側にいてくれたね


やっと直生が玄関から小さなスーツケースを持って出てきた。

「えっ? 直生の荷物それだけなの?」

「夏芽の荷物は多すぎない? それじゃあ荷物持って歩く時重いよね」

「そうなんだけど。でもこれ以上は減らせなかったの」

「そっか。じゃあ学校までスーツケースを交換して持って行こう。夏芽の貸して」

「え、いいよ。自分で持つから大丈夫だよ」

「いいから貸して」

荷物の交換を断ったのに直生は私のスーツケースを掴み、代わりに直生の小さなスーツケースを私に渡した。

「直生、ありがとう。いつもいつもごめんね」

直生はいつも私を甘やかす。

どうしてこんなに優しいんだろう。

そして見返りなんて全然求めてこないの。

学校への道を歩きながら直生に聞いてみた。

「直生ってね、いつもいつも私に優しくしてくれるでしょ。それに遥生とのことを応援もしてくれる。それなのに私って直生に何もしてあげてない」

「夏芽はそんなこと思ってたの? 僕は夏芽から何かしてもらおうなんて全く思ってなんかないよ。僕が夏芽に優しくするのは僕がそうしたいだけ」

「直生が優しいから私、すごく直生にわがままになってる。直生に甘えちゃってる。それじゃダメなのに」

「ダメじゃないよ。僕で良かったらうんと甘えてよ。夏芽に頼ってもらうの嬉しいんだ」

直生はそう言ってくれるけど。

私が直生にしてあげられること、何かないだろうか。

私の重いスーツケースを運んでくれている直生を見ながらそんなことを考えていた。


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