アリンコと佐藤くん

4 ふたたびドキドキの一日

 翌朝。
 ガバッ! と飛び起きて、スマホを手に取る。
 ドキドキしながらLINEを見てみたけど、佐藤くんからの返信はない。
 今さらLINEしてもウザかったかな……? と、落ちこみそうになったけど。
 小さくついてる『既読』の文字。
 まだ希望は捨てちゃダメだよね。
 ボアボアのマスコットをお守りがわりにカバンにつけて、さあ出発!
 今日の天気はくもり空。
 このままひどい雨降りになるか、それとも、パーッと晴れ間がのぞくのか。
 先のことは全然分からないけど、とにかくやれるだけのことはやってみよう!

 ドキドキ、ドキドキ。
 緊張と不安で、心臓の音が高鳴る。
 終業式。体育館に集まって、校長先生の話を聞いていても。
 たえず気持ちはザワザワしていて、全然耳に入ってこない。
「大丈夫か、有川。顔色悪いぞ?」
 担任の先生にまで心配されちゃった。
「いえっ、大丈夫です!」
 と、あたしは答えたけど、実際はプレッシャーに押しつぶされそうになってる。
 人間ってそんなカンタンに強くはなれないんだなぁ。
 だけど、もう逃げないって決めたんだから。
 放課後までなんとか乗りきろう!

 終業式が終わると、教室で通知表を渡された。
 みんな成績には一喜一憂してるけど、これで春休みを迎えられるってどこかホッとした表情を浮かべてる。
 だけど、あたしは。
「ねぇ、アリンコ! 帰りにさ、駅前のカップケーキの店寄ってかない?」
「ゴメン、芙美ちゃん! あたし、これからどうしてもやらなくちゃいけないことがあるの!」
 いつになく必死なあたしに、いつもはクールな芙美ちゃんもタジタジ。
「ど……どうしたの?」
「ほんとにゴメン。今日だけはダメなんだ!」
 両手を合わせてあやまるあたしに、芙美ちゃんはピンときたようで。
「分かった。アリンコの悔いのないようにやんなよ!」
 と、笑いかけた。
 ありがとう、芙美ちゃん。
 今日のことがどんな結果になっても、芙美ちゃんにはきちんと報告するからね。
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