拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

「迷惑だなんて思っていない。寧ろあの場で君に会えて良かったと……そう思っている」

「……え?」

「……これから先も……君に頼ってもらえる相手になりたいと、思う」

 ……それって、どういう意味……都合のいい様に受け取ってしまいそう。これから先? って。


「君といると心が落ち着く。君といると楽しい。君と次に会う約束があると安心する。この先君が笑って過ごせる場所が私の隣であってくれたら……そう思っている。私は君の事が好きなんだ」

 真剣な顔で、でも優しい顔で私を見てきました。閣下が私を?


「嫌なら遠慮なく断って欲しい。私は令嬢に好かれるような風貌をしていないし、」
「いいえ、いいえ、そうではありませんの。閣下にそんな風に思っていただけている事に驚いて……」

「すまない。圧をかけてしまったのだろうか」

「圧? そうではなくて……わたくしは婚約破棄の経験がありますし、そのような者が閣下の周りにいる事を面白く思わない人がいるのではないかと……」

「それは全く問題ない。安心して欲しい」

「年齢の差も……閣下に見合わないと」

「そうだよな。君からしたらおじさんにしか、」
「いいえ、いいえ。そうではなくて……閣下から見たらわたくしなんて子供ですし、」

「一緒にいたら心が安らぐ。一緒にいたら楽しい。そう思うのに年齢は関係あるのだろうか……年齢と身分を差し引いてもダメなら……断って欲しい」



「……わたくしも閣下と過ごす時間は楽しいです。閣下のことを考えていると夜も眠れなくて……」

「寝不足の原因を作ったのは私だったのか!」

「……初めての事なので……でも閣下のおっしゃる通り身分と年齢を差し引いたら、」

「……それは、つまり」



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